Made by hand

街外れの古びた一軒家に、ハウトは住みついていた。
近所では腕の良い便利屋として名を馳せており、家電の修理などを請け負って生計を立てている。そんなわけで今日も「近所のばあちゃんに頼まれた」と言って、せっせとミシンの修理をしていた。
カペラはそんなハウトを見つめながら、出されたお茶を飲んでいた。
ハウトとの関係は「元同僚」——だが実は、それ以上に彼の事が気になっているカペラ。時折こうして様子を見に来ているのだ。

「ねぇ、ハウト。こっちのミシンも修理するの?」
ふとカペラの目にもう一台のミシンが目にとまり、そう訊ねると。
「そっちのミシンはワイのや」
とハウトが答えたので、カペラは驚いて目を丸くする。
「ハウト、ミシン出来るの?」
「ああ。何せワイは手先が器用やからな」
なるほど——とカペラは感心する。
機械に限らず物作りなら、何でも得意だったのか。
「どんな物を作るの?」
カペラの言葉に、ハウトは手を止める。
「おっ、見たいか?ワイの作品」
カペラが頷くと、ハウトは立ち上がり——棚の奥に仕舞ってあった「作品」の一つを持ってきた。
「どや?綺麗に出来とるやろ」
それは白いウェディングベールだった。
沢山の白い造花があしらわれ、レース生地がひだを描きながら地面に落ちるシルエットが美しかった。思わず見惚れる程に。
「これ、本当にハウトが作ったの?」
意外なチョイスに、カペラは思わず確認してしまう。
「ああ。ハンドメイド作品として出品してあわよくば一儲けしよと思てな!」
そういうことか——まあ、変な発明や無茶な改造で人様に迷惑をかけるよりはマシかもしれない。
そんなことを考えていると、ハウトはカペラに、そっとウェディングベールを被せた。
「お。似合っとるで、カペラ」
「私に押し売りする気?」
「んなわけないやろ…見てみたかったんや、コレつけたカペラを」
そう言ってハウトは、カペラの顔をまっすぐ見つめて微笑んだ。
——カペラは返事を返せず、顔を赤くしたまま俯く。
「……馬鹿」
やっとその一言だけ言うと、カペラはベールを外した。

「相変わらず仲が良いな、お前達は」
玄関から呆れたような声が響く。レグルスだった。
「おう、レグルス!来てくれたか!」
「何でオレを呼び出したんだ、ハウト」
勝手知ったる元同僚の家——と言わんばかりに、レグルスもまた上がり込んでくる。
「今月誕生日やろ?プレゼント渡そうと思てな」
そう言ってハウトは缶チューハイを一本冷蔵庫から取り出すと、レグルスの前に「ほら」と音を立てて置いた。
「……カペラと偉い差だな、オイ」
「何や。プレゼントは金や無くて心を込めるもんやろ」
「明らかに心も込めてねぇだろ」
こんなことで呼び出すんじゃねぇ、とハウトの襟首を掴むレグルス——カペラはその様子を見て、ふっと笑みを浮かべた。何だかんだ平和で、元同僚達も相変わらずだ。この日々をもたらした、あの白い戦士に感謝しなければ。

「折角三人集まったことやし、今日はウチで夕飯喰ってき!」
ハウトの言葉に、二人は顔を見合わせた後「やれやれ」と言った様子で頷いた。
今夜は賑やかになりそうだ。