青いお菓子の話
“爆炎の白き戦士”と呼ばれる少女は、どういうわけか非常にトラブルに巻き込まれやすい。その日もたまたま遊びに出かけていた小さな惑星で、事件が発生した。
最近ネットでもよく話題になっていた、星一つが丸ごとテーマパークになっているという小さな惑星。遊び切れない程のアトラクションに、美味しいフードやドリンク、夜には華やかなパレードと花火。——何ヶ月も前からチケットを予約して、楽しみにしてたのに。
入場して間もなく、テーマパークの上空を覆う巨大戦艦。
武器を抱えて地上に降り立つ強盗団数十名。
考えるよりも身体が先に動く少女——もとい、“爆炎の白き戦士”。
いつものように民間人を避難させ、爆弾片手に死闘を繰り広げ、一時間後には何とか強盗団全員を拘束し、事件を解決に導いたものの——「テーマパークで遊ぶ」という休日の予定は、台無しになった後だった。
「ボンバーマン、お疲れ様」
「ありがとう、ポミュ…」
相棒からの労いの言葉に、少女は溜め息をつく。
そして、パーク内にあるカフェテラスの椅子にふらふらと腰を下ろした。トラブルには慣れているとはいえ、流石に疲れた。俯いて、目の前のテーブルに視線を落とす。
「あの……」
ふいに声を掛けられて、少女は顔を上げた。
そこには、エプロンをつけたカフェの従業員の姿が。
「助けて頂いて本当にありがとうございました!今はコレしか用意できませんが、良かったら…!」
そう言って、従業員がテーブルにそっと置いてくれたのは——大きなグラスに注がれた青いソーダに、雪のようにまっ白なアイスクリーム、つやつやとした赤いサクランボ——美味しそうなクリームソーダだった。
「わあ…!こちらこそ、ありがとうございます!」
甘いものが大好きな少女の表情は、すぐさま笑顔に変わった。
涼しげな青い色のソーダも、ひんやりしたアイスクリームも、乾いた喉に染みるようだった。
「青いクリームソーダって、ちょっと珍しいミュ」
アイスを一口貰ったポミュが、むぐむぐと口を動かしながら、そんなことを呟く。
「そう言えばそうかも…」
少女も同意しながら、ソーダの色を見つめる。
「青か……」
——少女の脳裏に浮かんだのは、青をまとった一人の戦士だった。
たった一人のライバルであり、思いを寄せる相手でもある、あの人。
「…レグルスって、甘いものとか大丈夫かな?」
「ミュ?」
少女が唐突に呟いた言葉に、ポミュは首を傾げた。
*
数日後、少女の姿は自宅のキッチンにあった。
ホワイトチョコレートを細かく刻み、湯煎で溶かす。温度に気をつけながら。
チョコレートが溶け切ったら、バタフライピーパウダーを混ぜる——綺麗に青く染まったチョコレートを、小さなアルミカップに流し込む。
仕上げに、星の形をした白いトッピングシュガーと、銀色のアラザンを、上から振りかけていく。
「星空みたいミュ!」
見ていたポミュが歓声を上げる。
無事に仕上げが終わって、「ふう」と少女は息を吐いた。
「後は冷やしたら出来上がりだよ」
言いながらチョコレートが並んだトレイを持ち上げると、そっと冷蔵庫の中へと運ぶ。
「でも、レグルスへのプレゼントにしては可愛すぎるミュ」
「あはは。やっぱりそうかな?」
苦笑しながら、冷蔵庫のドアを閉める。
「青といえば彼だから…似合うかなって思ったんだけど」
少女の言葉に、ポミュは「やれやれ」と溜め息をついた。
我が相棒は本当に、レグルスのことが好きすぎると改めて実感する。
「まあ…もしアイツが受け取らなかったら、ボクが食べても良いミュ」
意地悪な顔をしながらポミュが言う。
受け取らない、なんてあり得ないって分かってるけど。
少女は困ったような笑顔を浮かべながら、「うん」と頷いた。
*
その日、やたらと可愛いチョコを食べているレグルスを、ハウトは偶然目撃した。
「何や、レグルス。可愛いもん喰っとるやないか。平成女児チョコか?」
レグルスはというと。
恋人から貰ったその可愛すぎるチョコを、慌てて背中に隠すのだった。